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モンガラくんが斬る

残業時間のオークション【モンガラくんが斬る】

飲み屋に入って、職場の愚痴を語り合う。必ず出るのが、残業の話。そしていつの間にか、残業時間がどれだけ多いかの競い合いになる。

「先月は20くらいかな」
「35時間」
「私の残業時間は53時間です」
「先月はあまり忙しくなかったから、80時間で済んだ」

モンガラくんも負けじと加わる。
「ぼ、僕の友達の友達は今月100時間とか言っていたな」

その様子は、さながら残業時間のオークション。

でも、残業時間を吊り上げていって一体何を競り落とすつもりなんだろう?
せいぜい手に入りそうなのは、「誰よりも働いているという勲章」とか「必死に頑張る自分への同情」くらい。
そんな不毛な競りに勝ったところで、誇りにもならないし、慰めにもならないと思うんだけどなあ。

モンガラくんの友達がぼやいていた。
「残業で疲れたって言おうと思っていたけど、みんなもっと残業しているみたいだから言えなかった」

そんな人が出てしまうのが、残業オークションの弊害の1つ。
だったら、そんなオークションさっさと降りてしまおうか。

仕事内容も職場環境も異なるのに、表面的な数字ばかり競ってみても仕方ない。
「800ドル」
「1,200円」
「3,000ルーブル」
そんなオークションがあったら滑稽だ。
でも、残業オークションでは頻繁にそんな事態が起きている。

共通の「何時間」という単位で競い合っているように見えて実は違う。
目が回る程大変な20時間もあれば、比較的やっていける35時間もある。
単純に「時間」だけで競り合っても仕方ない。
それに何より、時間数で大変さを強調せずとも、「最近忙しくて疲れた」とか「先月は頑張って働いたのよ、偉いでしょ」とか言えたら話は早いのに。

ついついヒートアップして乗せられてしまうこの「競り」を、すんなり降りられるかどうか、モンガラくんにも自信はない。
でも、もし上手く距離を取ることができたなら、オークションで得ようとしていた称号に代わるものでも探してみよう。

そして、今までと違った自分を見つけられたら。
「あなたより仕事量の多い私」じゃなくて、「カクレクマノミが大好きな私」とか。
「月何時間残業してる僕」じゃなくて、「好き勝手なエッセイを書いている僕」とか。

そんな自分を見つけて、晴れて残業オークションを卒業しよう。

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